コウノトリ市民科学 

「コウノトリ市民科学」ってなに?

コウノトリ市民科学

 「生物多様性の保全」という世界共通の目標に近づくためには、多様な生物種や生態系の現状をしっかり把握しなければなりません。その役割を担うのが市民科学です。市民科学は、「市民が主体となり専門科学者と協働して、自然界の理解と適切な管理に役立つデータを収集、分類、分析する」営みを意味します。現在、世界中で、生物の種や種群について、いつ・どこで見られたかを市民が報告しインターネットを通じてその情報を共有する市民科学が活発に展開されており、そのデータが生物多様性保全のための政策を支えています。

 「コウノトリ市民科学」はコウノトリを対象とした市民科学プログラムです。世界中の多くの市民科学プログラムがを対象としたものであるのに対して、足輪などで個体を認識してその行動に関する科学的データを得て、野生個体群の再生という地域や市民の取り組みに役立てようというユニークな取り組みです。すでに多くの市民のみなさんが、コウノトリの個体の行動観察に取り組んで有用な情報が蓄積されつつありますが、それらを統合し、未来の市民や研究者を含め関心をもつ多くの人々が利用可能なデータベースを協力してつくりあげることを目的にします。

 最近、動物の行動に関する研究分野は、個体による違いをパーソナリティ(=個性)として把握・分析し、進化や生態の深い理解、保全の実践などに役立てることがめざされるようになってきました。コウノトリの生態をより深く理解し野生個体群再生を成功させるためには、市民のみなさんの目を通したパーソナリティの把握のみならず、分析・評価も重要です。そのため、このプログラムは、インターネットによるデータの記録・共有にくわえて、市民がデータの分析・評価にも研究者と協力する対面型の行事も実施します。

 私たちは今、1980年代にほぼ野生絶滅ともいえる状況に陥った東アジア個体群が、地域の野生復帰の取り組みを通じて再生のきざしをみせるという、希有な歴史的な場面に立ち会っています。個体の行動をしっかり記録し、個体群がどのように再生していくか、それに各個体がどのようにかかわるのかを見まもりましょう。

 コウノトリ市民科学は、「コウノトリとの共生」、ひいては「自然との共生」のための市民科学です。共生は、人間がもっとも人間らしく生きるためのキーワードです。コウノトリに優しいまなざしを向け、地域を越えてつながろうとしている人々の絆、生物多様性の保全・自然再生に取り組む地域と若い研究者との絆、そして、現代の私たちしかとれない貴重なデータを利用する「未来の研究者」や「未来の市民」との絆を結ぶ市民科学として発展することを願っています。

メンバー

「コウノトリ市民科学」は、「日本コウノトリの会・東京大学・中央大学協働プロジェクト」として行われています。

日本コウノトリの会
- コウノトリ調査に参加する市民の募集、参加者の活動支援のための諸業務、参加者が入力したデータのチェック

東京大学 生産技術研究所 喜連川研究室
東京大学 地球観測データ統融合連携研究機構
- 情報システムの開発・実装・維持管理

中央大学 理工学部 人間総合理工学科 保全生態学研究室(鷲谷研究室)
- 活動の企画・コーディネート、データの活用(とくに科学的分析・評価など)に関する提案・例示

謝辞

また、このサイト「コウノトリ市民科学」は、データ統合・解析システム (DIAS)の支援により運営されています。

自治体や団体の方へ

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